2009年6月5日金曜日

黄昏時の山向こう

遠くフクロウが鳴いている。
遠い御山で鳴いている。
今日は一羽が鳴いている。
黄昏時が過ぎていく。
フクロウの鳴く山へと沈み行く。
空が群青に染まる前、一際強く鳴いていた。
夕日はフクロウが平らげた。
そんなことを考えた。
逢魔が時には魔物が這い出る。
今日の魔物は夕日を食べるフクロウだった。
黄昏を過ぎたその場所で、静かに虫が鳴いていた。

2009年1月28日水曜日

エコー

遠くから聞こえる音はどこから響いてきたのだろう
僕が発する声はどこまで響いていくのだろう
たぶん世界には僕が生まれるずっと前から響いていて
僕が死んだ後もずっと響き続ける音がある

"エコー"
山から山へ
そして海へと渡っていく

"エコー"
足下から空へ
空からどこか知らない大地へ
延々と響き渡っていく

僕が今発したこの音はどこまで行くのだろう
もしかしたらこの音は僕が発する前に誰かが発していたのかも知れない
僕がたまたま受け取ってたまたま音を増幅していただけなのかも知れない

もしかしたらこの音この声がいつの日か君に届く日があるのだろうか
都会の喧噪に紛れた僕の音が君に触れられる日があるのだろうか

"エコー"
知らない街へ知らない国へ

"エコー"
僕の故郷へ僕の思い出へ

もう戻れないあの時代の音を伴っていつまでも響き渡れ

2008年12月19日金曜日

戯れ言No.002

まだこの場所にいたい
理由が言葉となって出てこない
言葉は音となって出てこない

この場所が好き
ううん、そんなたいしたことじゃない
それでもこの場所にいたい
まだこの場所にいたい

ずっといられる訳じゃないって言うのはわかっている
今すぐにでも旅立たなければいけないって言うのは知っている
それでも僕はこの場所にいたい
この場所は僕にとって掛け替えのない場所だから

それでも僕はいつかこの場所から旅立つ
だから、それまではこの場所にいたい

2008年12月15日月曜日

戯れ言No.001

なんでもないことを当たり前のように感じていたい
当たり前だと思えることを幸せなんだと思いたい
僕は明日も今日を生きるから
このままずっと感じていたい

僕のわがままを信じることは出来ないけど
僕の心を信じることは出来るから

いつまでもいつまでも今日を生きていきたい
いつか終わるその日まで僕は生きていきたい

2008年12月10日水曜日

満月の前に逢いましょう

満月の夜は明るすぎる
満月の後は寂しすぎる

満月の前に逢いましょう
逢って話すことは1つだけ

次の逢瀬の口約束
それだけの約束の日

満月の前に逢いましょう
満月の夜は帰りましょう
満月の後はすれ違うから

2008年9月21日日曜日

天球の水面

空に浮かぶ小さな星のどれもに映る水面の記録
まるで合わせ鏡のように
まるで伝言ゲームのように

水面に映った己には決して触れられない
水面に映った世界には知らないものが写りこむ
水面の向こうの世界には決して触れてはならない

それは天球に広がる未知なる世界
天球の水面にだけ写る世界

2008年8月4日月曜日

ふるかぜ

ある日そこに風が吹いた
古い古い弱い風
懐かしい香りを伴った微かな風
はるか遠方よりの使者は
はるか彼方の香りを運ぶ

古い古い風はそこで留まりそこで霧散する
新しい風はそこよりうまれてそこから飛び立つ
風のうまれる場所は風の消える場所
風の消える場所は運んだ香りの届け先

古き風は新しき風へ道を譲れ
新しき風は古き風より空を知れ
風はそうして巡っていく
風はそうして流れて行く
止まることのないただの風
とどまることのない風の鼓動