2008年5月26日月曜日

彼方の旅支度

最期の時がやってくる
足音を忍ばせつつやってくる
気がついた時にはもう遅い
そこに僕はもういない

そんなに身体を揺らさないでくれ
そんなに胸を濡らさないでくれ
僕の意識はもうソコにはないから
月並みな言葉しか思い付かない
気休め程度の笑顔しか浮かべられない
でも、気付いてほしい
僕が笑っていることを
僕が投げ掛けたたった一言を
『ありがとう』
君の頬を伝った涙は僕がそっと持ち去ろう
君が悲しみに暮れないように
僕は僕を連れ出して、旅に出よう

君は君の旅に出る
その日はいつかやってくるだろう
気付いたときには旅立ちの時
僕はキミを見送ろう
だから僕は先に行くよ
長い旅路のどこかでまた逢うこともあるだろう
永い旅の向こう側でまた巡り会えますように
だから笑って欲しい
もう時間は過ぎている
『さようなら』
僕の胸に落ちた君の吐息はそっと君に返そう
僕のいた証として
君と一緒に居たかった

あいまい

あいまいすぎる君の態度
あいまいなままでよかった
ずっと前から気付いていた
あの頃に感じていた
気付かないまま過ぎ去った
小さいけど確かな気持ち
今更気付いてしまった
淡いなんて一言で、片付けないで
もう戻れない――

あいまいな時間を追っていく
ずっとずっと走っていく
もう決して追いつくことができない
時間の中に消えていく

あのときの柔らかな時間の中で
確かだった記憶が残る
確実なものなんて何もなかったあの頃に
一言だけ置いてきた言葉を探した
大切なものも全てあいまいにして
あいまいなものをぼかしていた
気がついた頃に後悔していた、それでも前に進んでいた
前に進まなくちゃいけなかった
前に進まないと動けなくなってしまうから

あいまいすぎる私の気持ち
あいまいなままじゃ嫌だった
ずっと前から気付かないふり
あの頃に気付かなかった
ほんの小さな確かな気持ち
いつまでも続く限り
いつまでも忘れられない
儚いなんて言葉で、片付けないで
もう戻らない――

あいまいな時間が去っていく
ずっとずっと彼方まで
確かめられないまま不確かに
季節だけが巡っていく

あのときの柔らかな時間の中で
確かだった記憶が残る
確実なものなんて何もなかったあの頃に
一言だけ置いてきた言葉を探した
大切なものも全てあいまいにして
あいまいなものをぼかしていた
気がついた頃に後悔していた、それでも前に進んでいた
前に進まなくちゃいけなかった
前に進まないと動けなくなってしまうから

あいまいな時が迫ってくる
ずっとずうっと忘れたふりした
遠い遠い過去のことだと
ずっとずううっと気づいていた
近い将来じゃない未来のことだって

だから、ね?
また二人一緒にあの場所に戻ってみよう
二人ならきっと、立ち止まらないから
あいまいな時間を確かにしていこうよ
歩いていける時間がある限り
あいまいなままでどこまでも

2008年5月24日土曜日

彼方の約束

今日という日がまた過ぎ去っていく
ずっと未来にあったはずの今日が昨日となり一昨日となって飛び立っていく
鮮明な記憶は混沌として今日を受け入れる
『また会おう』なんて気楽な約束はすぐに風化していってしまう

あの時の僕と君にはもう会えない
あの時みたいな素直な気持ちはあの日と一緒にすでに飛び立ったあとだから
『僕は後悔はしていないよ』
そんな簡単な嘘が代わりにやってきた

あの日の約束は未来の約束
でもあの日と一緒に風化していく約束
あの日に置き忘れた約束
あの日に置いてきた約束

さよなら

さよなら、今までの自分
さよなら、私が知る自分
さよなら、周りの全ての己

そしてこんにちは、新しい私
今まで知らなかった私の私
こんにちは、これからよろしくね
でも……、あなたは誰?
新しい私は誰のこと?
私は私、今までの私
私は私、これからの私
知らない私が私を塗りつぶす
新しい私として、私を塗りつぶす

違い穿つ

違いし時間は不安を煽る
穿った時間は平穏を撒く
安らぎはその向こう側

違い穿ち、穿い違い
違つ穿う、穿つ違つ
違い穿つ、穿い違つ

変わるものはそれだけ
変わらないものもそれだけ

たがいちがいに、変わりゆく
変わらぬものも、たがいちがい

穿ったものはそのさきに、違ったものを見つけ出す
変わらぬものは変わるもの
変わるものは変わらぬもの

穿ったものは違ったもの
違ったものは穿ったもの

戸惑い

いつの間にか追うようになった、戸惑うようなあなたの背中。
くだらない話題にもずっと耳を傾けてくれるきみ。
気付くといつも何かに戸惑うように、そっと肩を揺らせていた。

それでも顔には決してそんなの出さない。
そんな君の背中が痛々しくて、切なくてどうしようもなかった。

気付いていたかな?
僕と話しているときのきみよりも、独りでいる君のほうがずっと楽しそうに見えていたって。

僕はそんなきみに少しずつ惹かれていった。
少しずつ君の姿を追うようになっていった。
少しずつきみと過ごす時間が増えていった。
僕自信、君に惹かれているって気付いたのはいつのことだったろう……。
なんできみに惹かれたのか、なんで君を追ったのか、今でもまるでわからない。
もうそんな君に会うことはないだろう。
あの頃からすでに永い時間が流れ、気が付いたときにはもう大人になっていた。

もう戻れないとわかっているのに、きみの影を追っていた。
ずっとずっと、ずっと……。
影はいつの間にか夕日を浴びた時のきみのように大きくなっていた。
そして僕から離れていった。
君の影を追って、僕の影も離れていった。
きみの住む僕の知らない町へ……。
ううん、そうじゃない。
僕はこれから追いかけるよ。
どっかに置いてきた僕たちの思い出と一緒に。
影じゃなくて、君自身を。
遅れているぶん走って走って、走って行くよ。
だから……、どうか待っていて欲しい。
どれだけの時間がかかるかはわからないけど、必ず追い付くさ。
とまどいは僕の中にあったから。

虫の声

幼い頃は聞いていた
背が小さかったからか、純真だったからか
今はもう聞こえてこない
あの日聞いた虫の声はもうほとんど聞こえない

いつの間にか変わっていたものは僕自身
なにも変わらないって信じていたあの頃

また原っぱで声を聴いてみよう
また河原で聴いてみよう
また山で聴いてみよう
聞こえなくなった声を聴いてみよう
ほら目の前に幼い頃の自分がいる

夏の頃

気づいた頃には緑が深い
夏の日差しがやってきた
春の花は緑でしげり
次から次へと生え茂る
夏の木々は深い色
光に負けない濃厚色

つくつくぼうしが鳴いている
遠いお山で鳴いている
近くの木々でも蝉時雨
ミンミンジワジワ鳴いている
そんなに鳴いてどうしたの
ミンミンジワジワ鳴いている

つくつくぼうしはお山の向こう
遠いお山を埋め尽くす
近くを埋めるは蝉時雨
遠い山からやってきた
蝉ばかりの夏のそら
山から森から聞き渡る

つくつくぼうしはお山の上へ
遠いお山に昇ってく
蝉時雨は川下り
ながい川を渡り行く
蝉ばかりの夏のそら
気付く時には鈴虫の声

つきみひめ

空にはぽっかりお月様。
月の下には女の子。
ぽっかり上がった月を見て、月光<<つきびかり>>の下で踊っている。
クルクルクルっと三回転。
チョンと横はね、前後ろ。
手拍子二回、足踏み二回。
回って回って回ったら、チョンチョンチョンチョン横はね前はね後ろはね。
パンパントントン手拍子足踏み。
前見て上見て下見てトン。
トントンパンパントンパントン。
朝日が昇る、月沈む。
沈んだ夕日が昇りだす。
月の時間ももう終わり。
夜の時間はまた今夜。
西の空に消えていった月のしたの踊りても。
月の踊りてもまた今夜。
それまで別の地で踊っている。
月の袂はまた今夜。